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血管内皮細胞異常とマクロファージ集積が大動脈解離発症を引き起こす

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(Image by sciencepics/Shutterstock)
 家族性大動脈解離の症例において同定された新規遺伝子変異を導入した自然発症型大動脈解離マウスモデルを確立し、これを用いて、大動脈解離が発症するメカニズムを調べました。その結果、血管内皮細胞の異常とマクロファージ(免疫細胞)の集積が大動脈解離の発症を促進することを見いだしました。

 大動脈解離は、大動脈の壁が突然裂けて血管が破綻するため、速やかな治療が必要となる重大な疾患です。特にマルファン症候群などの遺伝性結合組織疾患を持つ患者では、比較的若年で発症しやすく、予防や治療法の確立が求められています。しかし、発症の分子メカニズムは、いまだ十分に解明されていません。

 本研究では、遺伝的要因が関与する家族性大動脈解離患者から同定されたフィブリリン1(FBN1)遺伝子の新規ミスセンス変異(塩基配列の変化により異常なタンパク質が作られる)をマウスに導入し、大動脈解離を自然発症するマウスモデルを確立しました。このマウスでは、上行大動脈において血管壁の内膜中膜亀裂が生じ、炎症細胞の著しい浸潤(集積)とともに解離が進行し、致死的な破裂に至ります。また、組織学的解析と遺伝子発現解析により、血管内皮細胞の異常が解離発症前から認められ、これにより、内膜における単球(白血球)とマクロファージ(免疫細胞)の集積および浸潤が起こり、炎症型?抗炎症型の両方の性質を持つマクロファージが増加することが分かりました。加えて、このミスセンス変異によりフィブリリン1と血管恒常性維持を担うTGFβ結合タンパク質との結合能が失われ、TGFβシグナルが低下することを見いだしました。

 以上より、血管内皮細胞とマクロファージの相互作用、およびTGFβシグナルの低下が大動脈解離発症の重要な分子基盤となることが示唆されました。本マウスモデルは、大動脈解離の分子機構の解明と新たな治療法開発に貢献すると期待されます。

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プレスリリース

研究代表者

狗万app足彩,狗万滚球生存ダイナミクス研究センター
木村 健一 助教
柳沢 裕美 教授

大阪医科薬科大学医学部外科学講座胸部外科学
神吉 佐智子 講師

関西医科大学医学部薬理学講座
中邨 智之 教授

掲載論文

【題名】
Novel aortic dissection model links endothelial dysfunction and immune infiltration.
(血管内皮細胞異常と免疫細胞浸潤による新たな大動脈解離病態機構の解明)
【掲載誌】
Circulation Research
【DOI】
10.1161/CIRCRESAHA.125.326230

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